建築士コラム

建築士インタビュー

角南 公淑

コンクリートの力強いデザインと、
心地よい空間を両立

「広い空間」を追求して
今回ご依頼をいただいたK様は、それまでご家族4人で滋賀県のマンションにお住まいでした。そこからより良い環境を求め、京都の中でも屈指の美観を誇る、平安神宮近くの土地を購入されました。

土地は55坪とかなりの広さがありますが、いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれる細長い土地の形は設計上の制約となります。そんな中、K様からご要望いただいたのは「リビングの空間は大きく」ということ。

暮らしの満足度を上げるためには、それぞれのご家族のライフスタイルに寄り添ったご提案が鍵になります。K様は、お住まいのマンションでもほとんどテラスには出なかったそうです。そこで当初予定していたテラスを取りやめ、リビングスペースを最大限に広げることにしました。さらに遠くの空間まで自然と目線が抜けるよう窓を配置し、視覚的にも家が広々と感じられるよう工夫を凝らしました。
RC住宅で叶える
ホテルライクな暮らし
K様は資産価値などを考慮し、当初からRC(鉄筋コンクリート)造の住宅を希望されていました。RCの建物は耐久性や気密性などに優れている反面、設計が難しい部分もあります。

今回K様が望まれていたのが「ホテルのような暮らし」。それは室温も湿度も、常に一定に保たれた快適な家を意味していました。コンクリートの住宅は木造に比べて熱伝導率が高く、求められる断熱基準を満たすことは容易ではありません。

まず『ネオマフォーム』という業界トップクラスの断熱素材を用いて、内側の断熱対策を万全に。加えて、室内の温度を一定に保つために一般的な全館空調も検討しましたが、その設備はかなりの場所をとり、居住スペースを圧迫することになりかねません。

広々とした空間の魅力を損なうわけにはいかない。どうするべきかと悩んでいたとき、ダイキンの『サラビア』という商品のことを耳にしました。これは屋外の空気を温度調節したうえで室内に取り込む、という換気システムです。ただ温度を調節するだけでなく除湿もしてくれるので、家中どこにいても空気がサラッと心地よく感じられます。

K様と一緒にショールームに行き、その快適さを実感して「これでいこう」と思いました。その快適さは、まさにK様が望まれたような高級ホテルそのものだったのです。
素材の魅力を
最大限に引き出す
RCの住宅は木造住宅より難しい部分も多いですが、私個人としてはRC住宅の設計をとても楽しんでいます。コンクリート打ちっぱなしのデザインは、それだけで絵になるからです。

K様邸の外観では、コンクリートを押さえる形で外装に杉板を組み、一部鎧張り杉の存在感を際立たせました。コンクリートの力強さと、杉材の落ち着いた雰囲気を組み合わせて、京都の町並みにふさわしい風格ある外観に仕上げています。

素材で何を用いるかは、自身の知識や経験からくるヒラメキが鍵です。今回デザインに取り込んだリブ天井も、日頃から様々な建築を見ていて「いつか使ってみよう」と自分の中でストックしていたものの一つ。細部まで洗練されたデザインが、K様邸の雰囲気にマッチすると直感し提案しました。
想いを込めた手描き図面
大切にしていること
私はいつも、最初の図面は手描きで作成しています。私にとって設計は「手で考える」という感覚に近く、描くことで正しい線が見えてくるためです。と、言いながらも「お施主様に夢を感じていただけるプランになっているか」と、最初の図面を出すときはいつも不安な気持ちです。

また、空間を考える上で、設計士として大切にしているのは、どのような案件においても光と影の対比に気を配ることです。そして、施主様との対話を繰り返し、目の前の個人との関わり合いから、実感を頼りに設計することも心がけています。今回のK様のようにほとんどプラン変更もなく満足して頂けた時は、大きな喜びを感じます。

K様邸のようにデザインと機能の両面でこだわり抜いたRC住宅を、自分の仕事として世に出せることを誇らしく思います。

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